消費についての因数分解

「お店を営む」という行為は、毎日、消費の瞬間に立ち会えるから非常におもしろい。

注文を受けて、コーヒーを淹れて渡す。それと引き換えに、お金を受け取る。非常にシンプルな行為であるにもかかわらず、この「買う」という行動には興味深い人間の心理が働いているように思う。

「買う」ということは、「消費」と言い換えることも出来る。生活に必要なもの、欲求を満たすものを買うことによって、より良い生活をもたらすことでもある。

生活に必要最低限のものを買うだけでなく、お金を出すことで時間を買えるもの、自分にとって元気の出るもの、承認欲求を満たすもの、誰かへのプレゼント、という可能性もある。

より良い生活をもたらすわけではない可能性が高いのに使ってしまうお金については、「浪費」と呼ばれることもある。

それとは別で「投資」と呼ばれるものがある。利益が大きくなることを見込んでお金を出すこと、と意味づけされている。株などが代表ではあるけれど、そればかりではない。日々の購買の中にもそれは存在する。「消費の理由」を因数分解した場合、お店に対する「投資」が含まれていることがある。

今後も長く続いて欲しいから、商品を買う。地域を元気にしたいから、地元でお金を使う、などなど。お金を使うということは、そのお店に対する投票であるとも言える。

自分のために商品を購入することは、消費的消費とも言えるかもしれない。お店や地域への投票という意識が購買意欲の中に混入している場合は、投資的消費とも言えるような気がする。100%投資的消費である、100%消費的消費である、とは言い切れないことが多い。けれど、1%でも投資的な気持ちが混ざっていれば、それは投資的消費であると言えるかもしれない。

消費的消費のお客さんと、投資的消費のお客さんでは「商品を買う」という行動は同じでも、内面で考えていることは全く違っていたりする。

我先に!最大限の利を!と、競ってお店のことを顧みずに購入しようとする姿勢は、極めて消費的消費のお客さんであるような気がする。

賑わっている時には一歩引いて、ヒマそうであれば購入しようといつも見守っていてくれるようなお客さんは、投資的消費のお客さんであるような気がする。

消費的消費のお客さんの数と、投資的消費のお客さんの数のバランスはお店を続けていく上で非常に大切な問題である。

常連さんだから投資的消費のお客さん、初めてだから消費的消費のお客さん、とも言い切れないところが面白い。購入している回数ではなく、お店の理念に賛同してくれていたり、働いている人に対するリスペクトや応援したい気持ちがある場合は投資的消費のお客さんである可能性が高いような気がする。商品そのものが他にないほどハイレベルだったり、もしくはコストパフォーマンスが良かったりする場合は、消費的消費のお客さんが増えていくような感じがする。

SNSの発達に伴い、それらが顕著に現れるようになった。

お店を始めて間もない時というのは、投資的消費のお客さんが増えやすい時期でもある。応援したい、みんなに知ってほしい、という気持ちがお客さんの来客動機の中に混ざっていたりする。この時期に、どれだけ多くの投資的消費のお客さん(お店の成長を見守ってくれるようなお客さん)が増やせるか、というのは小さなお店にとっては、とても大切な問題だ。

人気になってしまってから、見守る意識でいてくれるお客さんを増やすのはたやすいことではない。

「消費的消費のお客さんの数と、投資的消費のお客さんの数のバランスはお店を続けていく上で非常に大切な問題である」と先述したのには理由がある。

お店が気持ちよく営業していくには、このバランスをうまく保つ必要がある。

消費的消費のお客さんの数がほとんどになってしまうと「より多くを求める」お客さんが増加し、小さなお店であれば必要以上に疲弊してしまう可能性がある。

だからといって、100%見守る意識でいてくれるお客さんだけになってしまうと、閉じたお店になってしまったり、甘えが出てしまう可能性がある。

難しいのは、バランスを自分で100%コントロールするのは不可能だということ。どうにか持って行きたい方向に1mmづつずらすことはできるかもしれないけれど、結局決めるのはお客さん自身だ。

お店からのSNS発信や、見せ方、メニュー構成、接客スタイル、などのちょっとしたことでバランスは簡単に変わる。お店が完璧であろうとするほど、完璧を求めるお客さんの数は増加するかもしれない。個人的な体感としては、「あれ?こいつちょっと抜けている?」くらいで居ると見守ってくれるお客さんが増えるような気がしている。(これをボケ作戦と呼ぶ)

「消費」という、毎日ほとんどの人間が行っている単純な行動は、単純なようでとてもたくさんの要素が絡み合っている。私自身は、子供が生まれてから便利なもの(ファーストフードのドライブスルーや、一箇所で何でも揃うショッピングモールなど)を利用することがやや増えた。消費的消費の割合が少し増したとも言える。

人生のフェーズによっても、それらの割合はその都度変わっていくのだろう。

便利なものは取り入れながらも、続いて欲しいお店や小さな良いお店、住んでいる地域、今後も利用したいお店や企業には「消費という投票」をしていかなければいけないなあと改めて感じる。

スマートだなあと思う大人たちは、この辺りをとても上手にこなしている。そういうお金の使い方が出来るような、スマートな人間に憧れる。

2021年03月22日 | Posted in ブログ, 私の生き方 | | 2 Comments » 

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コメント2件

  • たまごサンド より:

    めがね!!!
    希先生!って感じ^^

    • NOZOMI より:

      たまごサンドさん

      メガネを頂くという稀有な体験をしたので活用してみました。へへ
      アラレちゃんみたいになりました。

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