拝啓 Sさんへ

「きみは水の人。湧き出る泉。」
そのおじいちゃんは、毎日私のことを占って、いつも最後はそう付け加えた。頼んでもいないのに、私の運勢をああでもないこうでもない、と言いながらトランプをめくった。易占いにどっぷりとハマっていたらしい。
「のんちゃん、お金がないからお金ちょうだい〜!」と毎日のように言い、私はその度に「やだよ、あげるわけないでしょ」と言い、いつも「うふふふ」と笑っている。若い女の子が来ると「今日は特別にタダだよ〜!」と手相を見始める、とんでもじいちゃん。
彼の占いを話半分に聞き、ほぉ、とか、へぇ、とか生返事していたのはもう随分と前のことなのだけれど。
その時の言葉がなぜだかしっかりと心の中に残っていて、今となって、私の重要なパーツであるような気がした。
「永遠に枯れることのない湧き出る泉」
それは、私のしたいこと、そして、するべきこと、そのものなのでは。
一つ一つの断片が、繋がっていく。
彼が入院した時、いつものアイスコーヒーを持っていくと、とても美味しそうに飲んでいた。
占いは、信じるとか信じないとか、事実であるとか事実でないとか、当たっているとか当たっていないとか、そういうことだけではなく、人生に勇気を与えてくれるものなのかもしれない。
少なくとも、今の私にとっては、そうであるように思える。
「僕は何も持っていないし、受け取るばかりで誰にも何も与えられない」と、しょんぼりしていたけれど、そんなことはなくて。私はちゃんと受け取っているよ。
10年以上経っても、あなたからのギフトを胸にしっかりと刻んでいる。
今もどこかで、笑っていますように。







コメントを残す