まずは、ボールを投げてみる
奪い合う関係か、与え合う関係か。
私がその言葉と出会ったのは【ゆっくり、いそげ】という本の中だった。
奪い合う関係か、与え合う関係か。そう問い直してみたときに、さまざまなことが腑に落ちたのだった。
昔働いていたカフェは、いつもオーナーとスタッフの間に亀裂が生じていた。
オーナーは【雇ってやっている】という姿勢が言葉や態度ににじみでており、スタッフは【働いてやっている】という態度で仕事をしていた。
そりゃあ、亀裂も生じるさ。
その双方を観察することは、私にとって非常に勉強になった。
あれは、おそらく【奪い合う関係】で、その関係のままでモチベーションを高く維持するのは困難なことであるように思えた。
怖いのは、一方が奪おうとしていなくても、もう片方がそのような態度であった場合、触発されて結果的に奪い合う構図になってしまうこと。
1つのボールを双方が奪おうとして、引っ張り合って結局同じ場所に留まっているのか。パスしあって何度もボールを往復させるのか。経済に置き換えても同じ構図であるように思える。
キャッチボールは【相手がきっと投げ返してくれる】という信頼感があるからこそ成り立つもの。投げたのに返ってこないかもしれない、と感じてしまえば、投げることは無くなるだろう。
この【〇〇してやっている】という感情は、どういうときに沸き起こってしまうのか。本当の望みではないことをしているときだろうか。本当はしたくないのに、してやっている。そういうことなのだろうか。
そう思うと、各々が自分のやりたいことを基盤に構成された社会は、わりと平和な社会であるように思える。
ときおり、お店にいると、よく知らないおじちゃんに「コーヒー買ってやる」というニュアンスのことを言われることがある。大人だから、ちゃんと笑顔で対応する。だけれど、望んでいないのであれば、無理にコーヒーを飲まなくてもいいのにな、と思う。
コーヒーを飲みたいな、と思ったときに、ぜひまた来てね、と思う。
飲みたくない人に嫌々買ってもらうことに時間を使うよりも、ここでの時間を望んでいる人に1分でも多く接していたい。
望んでくれる人がいるから、私は今日もコーヒーが淹れられる。笑ってくれる人の顔を見ると、私も喜びで満たされる。そういう循環であるには、やはり奪い合っている時間なんてないのだ。
奪い合っている時間なんてない。
その時間を、もっと有意義に使いたい。
人間は、とてもすごい発明をしてきて、技術も便利さも築いてきたわりに、とても簡単な、根本的なことができなかったりする。その不完全さも含め、人間という生物が愛おしいのだけれど。
まずは世界を信頼して、ボールを投げてみる。きっと、ボールは返ってくる。そこから、キャッチボールは始まる。そうやってしか、キャッチボールは始まらない。きっとそういうものなのだ。
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コメント4件
ブログの内容は100%共感するし、言われた本人ではないけど「よく知らないおじちゃん」には腹も立つし、可哀そうとも思ってしまいます。
あと今回の話で思い出したのは、影山さんとお会いしたときに腑に落ちた言葉で「奪おうと思ってる人(経済的合理性を追求する人)と、そうでない人が2種類いるわけではなく、誰の中にも両方の気持ちが存在していて、場面によってどちらかが出たりする」といったような内容でした。
もしかしたら24時間365日誰に対してもどんな場面でもブレない人はいるのかもしれないけど、大概の人の中にはいろんな気持ちを持っているんだと思うし、少なくとも自分自身に当てはめてみるとそう思います。
それをいい感じでコントロールするのが知性とかセンスとか倫理観みたいなものなんでしょうね。
そういう意味ではまだまだ未熟だと改めて反省しました(^^;
【ゆっくりいそげ】、なんか聞いた事がある気がします
ココで紹介されてたかな?
オーナーとスタッフの話し、どこにでもありそうな話ですね
お互いにストレスが溜まり、見ている周りの人もストレスに感じる…
上司と部下の関係にしてもしかり、陰で悪口を言われる様な関係は何かしらの問題を抱えているのだ
イチローさんのお話で、その人に対する悪口を【本人の前で言えないのなら言うべきではない】というのを思い出した
そんな事に何の生産性も無いのだから…
「コーヒー買ってやる」というおじさんはお客様の少ないタイミングで来店されたのだろうか?
繁盛していないお店だと心配して「オレが買って助けてやるよ」的な発想かしら
お客様の方が上位という考え方なのかもしれませんね
お客様とお店は対等なはずなのにね
レストランなどで店員を下に見て、高圧的な態度の人もお客様は神様だと思い込んでいるのでしょう
そんな人はスーパーのレジで会計が終わっても「ありがとう」って言わないんだろうな
【何か】してもらったら感謝する、当たり前の事が出来ない人が増えている気がします
キャッチボール、受け取って返してくれると信じてボールを投げてみる
まずは豪速球ではなく、ふんわり優しいボールから始めましょうか