まどろみ人間

ある日、なんだか今日は頭が重いな、と思ったとする。
その要因はいくつも考えられる。
①昨日夜ふかししたからかもしれない
②風邪気味なのかもしれない
③脳の疲労かもしれない
④ストレスが溜まっているのかもしれない
⑤ホルモンバランスの乱れかもしれない
⑥低気圧のせいかもしれない
ほかにも、あらゆる可能性はある。
それに対して、根本的な原因はなにかを見定めるのってめちゃくちゃむずくない?と、ずっと思っている。根本的な原因が分かれば、環境を変えるなり、ToDoを見直すなり、改善するよう心がけることは出来るけれど、そもそもの原因を見誤れば、対策方法も誤ってしまうこととなり、症状が好転することはない。(一時凌ぎはできそうだけれど)
みんなどうやって見定めているのだろう。
原因がひとつとも限らない。複合的なことである可能性も高い。
根深いひとつの根本が、さまざまな症状を併発させていることも多いにありえる。
これかな?これかな?と、ひとつづつ試しながら様子を見ながら探っていくしかないのかもしれない。身体は正直だ。身体反応に従うことでしか自分にとっての最適はわからない。
私が昔からどうしたものかと思っている身体症状は”眠気”。
授業中の50分間、くっきりと起きていられたためしがない。だいたい微睡んでいるのだし、ノートの字は解読不能。だいたい意識がない。ときどき例外があって、興味のある授業だけはバキバキに目が冴えている。(なんでそんなに簿記の授業に興味があったのかもよくわからないのだけれど)
寝ても寝ても、なんでそんなに眠いのか。ホルモンバランス的なことなのか。ストレス的なものなのか。交感神経と副交感神経のバランスか。食事か。生活習慣か。
もし、強烈な眠気が脳からの司令だとしたら、私の身体は何を遮ろうとしているのか。
”興味”と”眠気”の関係はいかに。
おとなになっても、私と眠気との関わりはずっと続いている。
眠気を抑える、という対処療法をしつつ、、私が眠くならずに続けてできることはなんだろうと調査した結果、どうやら自分にとっての”興味”があることに向かっているときには眠くならないらしい、というところまではわかってきた。
私が日常の中でくっきりはっきり起きていられるのは、お店に立ってお客さんにコーヒーを淹れているとき。話しているお客さんの話を聞いているとき。今のところ、起きたまま生きているために、お店と自分の生は密接に関係している。
ある本の中で、「眠気はシャットダウンの術であるから、素直に従ったほうがいい。無理に起きていると脳に負荷がかかりすぎる」と書いてあって、なんだかホッとした。
授業中に起きていられない、というのは、一般的には”怠惰”ということになっているし、”反抗的”にも見えるかもしれない。「違うんです、だるいから寝ているのではなく、一生懸命聞こうとしてもどうにもこうにも目が閉じてしまって。昨日は9時間寝ました。自己管理がなっていないわけでも、反抗しているわけでもないのです。」とでもいえばよかったのか。
いや、言ったところで何もかわらないだろう。
みんなはああいうとき頑張って起きていたのかなあ。それとも同じように、うつらうつらしながらこっそり眠っていたのかなあ。
身体の司令に従わない、ということが”頑張る”ということで、”努力”ということで、”社会に適応する練習”ということだったのかなあ。(きっとそうだね)
身体の特性が、怠惰や非常識と結びついてしまうのはしかたのないことなのか。自覚がなければ、うまく説明もできないし、幼少期であればなおさらだ。気合が足りないのか、怠けているだけなのか、生まれ持った特性か、環境でそうなったか、どの程度できないのか、どのくらいの強度か。
そういうのは、他人の身体感覚を体験できるわけではないから、正式には比較は出来ないし、共有することも出来ない。だから、自分の言葉で伝えるしかないのだけれど、うまく伝わった例がない。
だから、自分の言葉をそのまま受け取ってくれる相手がいることは、救いに等しい。諦めずに一緒に考えてくれる人がいた、ということは生涯の記憶に残る。問題の解決はしなくとも。
そうして救われたことがあるから、誰かにとってのそのままの言葉も、そのまま受け取りたい、と思っているのに、それは想像以上に難しい。知識がついていくほどに難しいのかもしれない。
「そんなのは怠惰だ」と言われてしまう世界で、どうにかこうにか生きていくしかないのだから、身体の司令に従ったまま、出来ることを見つけていくしかない。
今のところ、起きたまま生きていられる環境にいることは、とてつもなく有り難い。
いつもコーヒーを淹れさせてもらって、話をしにきてくれて、興味を刺激してくれて本当にありがたい。すべてのお客さんと、街を通る人と、暮らしている人と、考えさせてくれる人たちと、目の前の現実にいいたい気持ち。
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