まちの空気をつくる仕事
立地の問題からなのか、スタンド形式の問題なのか、切羽詰まった状態で「コーヒー頼むと何分かかりますか!!?!」と、言われることがある。
急いでいるのだろう。
電車なら15分に1本ほど、バスなら1〜2時間に1本の路線も存在するこの駅で、そう叫んでしまうのは無理もない。乗り遅れたら THE END なのだ。
そういった場合、他に待っているお客さんがいなくとも、極力長めの時間を提示してやんわりと断るようにしている。
ドキドキしながら、ハラハラしながら(まだか、まだか、まだか、、、もうそれでいいのに!!!)などと思いながら待つ時間は、なんとも窮屈だ。その時間が心地よいとは思えない。そんな時にコーヒーで一息ついて欲しい気持ちもあるのだけれど、生意気を言えば、急かす視線を感じながらコーヒーを淹れたいとは思っていない。
すぐ隣にはロッテリアもあるし、マクドナルドもあるし、自動販売機だってある。「コーヒーを摂取する」という目的は、ここでなくとも果たせるであろう。
急いでいても「あと10分あるから、大丈夫よ」などと言ってくれる、余裕のある状態の方だったら、こちらも極力無駄を減らし、その中で美味しいコーヒーを淹れたいと思う。
はなっから急げオーラを出されてしまうと、そこに存在する空気が一瞬で張り詰めて尖ったように感じる。それは、当事者同士だけでなく、その場にいるお客さん全員に伝染する。
コーヒー屋として、なんとも避けたい瞬間である。
先日、高校生へ「未来ダイアログ」という授業の企画で話しをしに行った。その中で、「バリスタとは、コーヒーを淹れるだけではなく、街の空気をつくる仕事」ということを話してきた。
街に美味しい空気をなるべく循環させる。やわらかい雰囲気、と言い換えても良いかもしれない。直線的な駅前に、あえて単調では無い曲線をひいて緩やかに乱していくイメージ。均一なグレーに、オレンジ色の水滴を落としていくイメージ。
そんなイメージで働いている、という話がどこまで17歳の彼らに伝わったのかは分からないけれど、、何かを感じてくれていたらとても嬉しい。
食べているものが身体をつくる、ということを知っている人は多い。
目に見える状態で反映されることからも、それは事実に違いない。
では、吸っている空気が人生をつくる、ということを知っている人はどれくらいいるのだろう。
目には見えないし、誰かに指摘されることも無い。だけれど、確実に、日々摂取している空気こそが自分の人生を作っている。確信を持って言える。
心地よい空気に囲まれることを、何より優先させた方が良いとすら思う。
自分が吸いたい空気があるならば、自分でそれを作ればいい。それが、自分の人生を生きるということだ。
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コメント7件
「空気を読むな!空気をつくれ!!」とか、イケイケの上司が部下に発破かけて、全員で「おーーーっ!!!」みたいなのは苦手だけど、ここで書かれている「空気をつくる」はすごく共感します。
まさに街のデザイン。
気合や支配欲で空気を変えようとするんじゃなくて、みんなが気持ちよくなることを目指している感じがいいです。
あ、写真もいい感じの空気漂ってる(^_-)
凄いですね〜❣️
でも良くわかる気がします。
教科書に載ったら、カラーコピー売って下さいね
自慢してふれ回ります
そうそう、そろそろエッセイの第一集を発刊しませんか❓
サイン貰いに行きます❣️
吸っている空気が人生をつくる。
なんか沁みました。