コーヒーのはなし
ここのところ「コーヒーの淹れ方を教えてもらえないか」という話が続いている。
お家コーヒーに興味が出てきた人、これからバリスタになりたい人、お店でコーヒーを扱うようになった人、など。各々の事情で「コーヒー」との距離が縮まり、もう少し美味しく淹れられたら、、ということなのかもしれない。
(え?わたし?)と、正直なところ思っている。おそらく、もっともっと詳しい人はいる。それこそロースターであれば、焼いた豆の特性を一番理解しているはずだから、その豆に合った淹れ方を一番知っているのはその人だと思う。
と、同時に(専門性が高すぎる人にはちょっと聞きにくいな、敷居が高いな)と、思ってしまう心境も理解できる。そうなると、その中間くらいに位置する人(始めたばかりの人の気持ちもわかりつつ、専門的な部分も多少知っていそう)がちょうどいいのかな、とも思う。
いつの間にか、カフェの業界に入ってから12年ほど経つ。それでも、知らないことや、新しい方法、考え方も随時更新されている。昨日までの常識が、今日の正解とは限らない。ほとんどの業界がそうであるように。
「どうやったら、美味しく淹れられますか?」の問いに答えるのは簡単ではない。そもそも「どんなコーヒーがあなたにとっての美味しいなのですか?」というところから始めなければならない。
どのくらいの温度で?どのくらいの豆の量?どのくらいのスピード?回す?回さない?ドリッパーは何がいい?という類の解答もおおよその目安はあるものの、ゴールが違えば正解も全く異なる。右から行くのか左から行くのかで道のりが真逆になることもある。
テレビなどでは分かりやすく「コーヒーの淹れ方」などと紹介されていることもあり、もちろん分かりやすくするために1つの方法を提示しているのだけれど、それが混乱の元になっていることも多い。
温度が高いと、こうなる。低いと、こうなる。
豆の量が多いと、こうなる。少ないと、こうなる。
荒いと、こうなる。細かいと、こうなる。
深い焙煎は、こういう特徴。浅い焙煎は、こういう特徴。
早い抽出は、こうなる。遅い抽出は、こうなる。
回すと、こうなる。回さないと、こうなる。
このドリッパーは、こういう特性がある。
一つの正解を暗記するより、上記みたいなことを理解して調整することがベストだと思うのだけれど、それはやっぱり、試しながら失敗しながらやってみなければ体感として得られないような気もする。
お店で立っている時だって、レシピとしては基準値が存在するものの相手の状態を想像しながら「今現在の相手にとっての美味しいとは」を想像しながらコーヒーを淹れている。
手にパンを持っているからコーヒーと一緒に食べるのかもしれない。午後一番であれば、食後に寄ってくれたのかもしれない。お昼ご飯、何食べたのかなあ。うどんかな?パスタかな?そのあとに「美味しい」コーヒーってどんなかなあ。今日、ちょっと元気がないような気がするけど、何かあったのかなあ。そんな時に飲みたいコーヒーはどんなコーヒーかなあ。今日は寒いから、なるべく暖かい状態お渡ししたいから、1mmだけ熱めに寄せようかなあ、、とか。
毎日のやり取りの中で、相手の好みを探っていくのも面白い。前回のコーヒー、どうだったかなあ、好みだったかなあ。とドキドキしながら気にしていたりする。
正確なレシピで、完璧な手順で、寸分の狂いもなく抽出できたら素晴らしい。だけれど、それはもしかしたら、人間でなくてもいいのかもしれない。
人間の手で1杯1杯目の前の相手に淹れることができる環境であるならば、その人のことをどこまでも想像することが、何よりも大切なのではないか、と思う。
直接まじまじと相手を見るのは恥ずかしいけれど、コーヒー越しになら、きっとうまく見つめられる。
コーヒーって、いいな。やっぱり、好きだな。
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コメント4件
読みながら、
「どんな家がいい家ですか?」
も同じだなぁ。。と思いました。
コーヒーいいよね☕️
好きな食べ物が違うように、
コーヒーもみんな好みが様々。
美味しいコーヒー・・・
コーヒーを知れば知るほど難しい。
最近は基礎から勉強中
何事も基礎をしっかり知らないと、
アレンジもできんかなぁって←頭硬め
教えてもらっても同じように淹れれんし
そこがまた面白い。
コーヒーの話したら止まらんから
続きはWEBで。じゃなくて店頭で。
今年はまだ、『のんちゃん始め』できてないから
楽しみにしてます☕️
いつか僕のコーヒーも淹れたいね