「もう行かない!」のこと

自分がとても気に入っているお店を、別の誰かは「もう行かない!」と怒っている事がある。

どう考えても、いつ行っても、クオリティも雰囲気もコンセプトも抜群であるのにもかかわらず、なぜだろう?と思う。個人の好みも存分に影響させるから、ここでの【抜群】は、【一般的にハイレベルと思われる】という広い意味で定義させてもらうことにする。

怒っている、と言ってもその怒り方は様々だ。

①スタッフの対応、言葉遣い、お店側の過失、などに怒っている場合。

②それから、コストパフォーマンス、商品が写真と違った、など、満足出来なかったことに怒っている場合。

③そして、お店のコンセプトや考え方から導き出された結果のみを見て怒っている場合。「結果」とは、営業スタイルだったり、メニューだったり、営業日や時間などお店が設定しているもの。

①は、常連さんであれば問題にならなかったようなことでも、新規のお客様であれば「ご立腹」にさせてしまうこともある。なるべくミスを減らしたり、その後の謝り方や対応で挽回できる可能性がある。その方法によっては、逆に相手との関係の修復を通して仲良くなれるチャンスすら潜んでいる。

②は、商売を誠実にやっていくしかない。誇大広告や、わかりにくい金額表示で相手が失望してしまったのであれば、おそらくその人はもう来ない。マーケット圏内のお客さんを徐々に減らしてしまうだけだという本末転倒な結果になることもある。短期でバババッと稼いで辞める予定のお店なら、それも作戦のうちかもしれない。

一番気になるのは③だ。お店のコンセプトや考え方から導き出された「結果」を見て怒っている場合。

「結果」とは、お店側が何を大切に考えているのか、どんな人に来てほしいのか、どういった事情があってそうしているのか、などという過程を経て導き出したものである。

この「過程」を知らない人にとっては「なんで?」と思うことも「不親切だな」と思うこともあるかもしれない。そして、その結果が自分の求めているものと違った場合や、歓迎されていないと感じた場合に「もう行かない!」となっているように思う。

そして、お店にとっても、ある程度は来てほしいお客さんの線引をしたいのだから、これは結果的に「合っている」のである。

ただ、問題はSNSの発達した時代において「怒ってしまった人」が、「あの店最低!もう行かない!」と書き込んでしまうことである。

①や②であれば素直に反省したらよい。だけれど、③に対しては反省しよう、とは思わないし思う必要もない。そうしているのには、理由があるのだから。

つまり、心の中で「もう行かない!」と思ってもらう分には全然良いのだけれど、不特定多数の人の目に入る可能性のある場所に書いてあるのはすこし悲しい。もちろん、書くな、ということではないのだけれど。そのお店を好きな人にとっても、見てしまったら悲しい気持ちになってしまう。そのことだけは頭の片隅に置きながら書いてほしい。

本当は、言葉などなくてもその「デザイン」で相手へ伝えることが出来たら、1番理想である。見た目のデザインだけでなく、メニュー構成や金額設定、雰囲気などのトータルデザイン。コンセプトや伝えたいことを言語化して整理したものを、非言語に置き換えて伝えることがデザイナーという仕事なのかもしれない。

多くは語らず、空気で伝える。それを「良い」と思った人のみが、また来てくれればいい。それが本来、理想的かもしれない。誰でもかれでも来てほしい、とは思っていない。

非言語で伝える能力。その能力が自分には乏しい、とわかっているから、私は③のような人をなるべく生み出さないように「言葉」で伝えることにしている。思っていることを不器用ながら伝え、大切に思っていることをその都度、再認識してもらう。「過程」の部分を、いちいち説明する。

ここにはかっこよさなど無いのだけれど、今の自分にはこれが精一杯。写真がメインのインスタにも、わざわざ長文を載せたりする。「情報」としての伝達より、思っていることを伝える手段として、くどくどと文章を書いている。(おそらく、そんなことは望まれてもいないし、大多数は読んでいないかもしれないし、もっと情報としての更新をしたほうがいいのかもしれないけれど。)

「嫌われる」のは構わないけれど、「よく知らないのに嫌われる」という機会を減らそうとしている自分のへっぴり具合には、いささか可愛げがある。(知らん)

「もう行かない!」その言葉を公衆の面前で放ってしまう前に、「過程」を想像する人が増えたら、ちょっと嬉しい。

2020年10月12日 | Posted in お店のこと, ブログ, 私の生き方 | | 2 Comments » 

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コメント2件

  • たまごサンド より:

    この前、パソコン画面の保護フィルムを買おうと思って、一応、レビューをみたら、「とにかく貼りにくい!」「貼り方の説明もわかりにくい」と☆1や2もいっぱいあったけど、実際に購入して貼ってみると全然普通で「おれってフィルム貼り方の天才?!」と思ったくらい。普通に気泡もはいって(押してつぶした)、隅がちょっと浮いたけど、それは自分の反省点であって、☆1や2にしてコメント書く気にはならないです。そういう人の方が圧倒的の多いのでは。

    ちなみに、「長文楽しみにしてる派」なので、これからも期待してます^^

    • NOZOMI より:

      たまごサンドさん

      フィルム貼りの天才!その愛称、今度会った際に。
      自分に対して肯定ばかりの意見でも【ほんとかな、本当にそう思っているのかな?】と思ってしまうし
      批評家ばかりの現実に投げ出されると【やりにくいな〜】と思ってしまうし、
      結局【見たいものだけを見る】というのが一番の理想なのだけれど、それだけでいいのかな、とも思ったり。

      あぁ、浜松行きたい!

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