早く家へ帰りたい/高階杞一
早く家へ帰りたい 高階杞一
「愛するこども」
障害を負って生まれてきたこどもとの4年弱の日々。小さな命をつづった、詩集。
———以下、とある日の、店主の個人的日記——-
その日、私は、いつになく苛立っていた。
帰ってきた夫が「なんか、今日、疲れてる…?」と悲しげに聞いてくるほどに感情を無にして、もくもくと夜ご飯の支度をしていた。
その日はなんだか、無性にキツかった。息子は、風邪で一日中機嫌が悪かった。ごはんを作っても「ヤ!」と皿ごと投げ飛ばされ、お水のコップを弾き飛ばし、クレヨンを机から叩きつけ、何をしても満足させてあげれなかった。
「やるべきこと」が溜まっているのに、なんにも出来ない。
10分でもいいから、時間が欲しかった。
そうだ!と思い立って、台所でうずくまって泣く真似をしてみた。息子がどんな反応するのか、見てみよう、と。すると、真似のはずだったのに、止め処なく涙が出てきた。
真似のはずだったのに、本当に子どもみたいに膝を抱えて泣いてしまった。
その間、息子はビックリして、私の顔をペタペタ触り、なんとか私を笑わせようと顔を覗き込んで笑いかけてきた。かわいいやつめ。そして、すこししてから一人で遊び始めた。そのおかげで、私はスッキリするまで存分に泣くことが出来た。
その日の夜、たまたまこの本を読んだ。
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「今日はだめ 少し強めにそういうと
首をかしげ あした?と弱々しげに聞く
明日もだめ、また今度 その途端ないてしがみついてくる
それでも放っていたばっかりに
ぼくには 永遠に そのまた今度が 来なく なってしまった」
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その夜、あれだけ出た涙が、また出てきた。でも、さっきの涙とは意味が違う。反省の涙だった。そして、心に誓った。「明日は、今日より、笑おう」
これからだって、きっと何度も、苛立ってしまったり泣きたくなるときもあるだろう。でも、そんな時には、この言葉たちを思い出そう。何度も何度も、忘れそうになってしまっても、何度も何度も思い出そう。
明日は、きっと、大丈夫。
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