本の読める場所を求めて/阿久津隆
本の読める場所を求めて/阿久津隆
本を読むことが好きな人にとって、ゾクゾクするほど共感してしまうのではないか、と勝手ながら心配している。「読んでいる」時の繊細な心境も、外側から見た「読む」という行為に対しての客観的視点も、ドキッとするほど的確かもしれない。
———-以下、抜粋———
本を読んでいる人の姿は美しい。両手のひらをてんに向け、背を丸め、こうべを垂れる。それはほとんど祈りの姿勢のようだ。じっと身じろぎもせず、目だけが絶えず動いている。目と、それから頭の中。
頼りになるのは自分しかいない。とにもかくにも自分で歩を進めなければどこにも向かえない。疲れたと言って目を閉じて、十秒の時間を置く。そして目を開ける。その十秒で、しかし残酷なことに物語は進んでいない。景色は以前と何も変わらない。再び腰を開けて、印刷された文字の上をペタペタと踏みしめていくほか前に進む術はない。
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阿久津さんは「読む」という行為を、美しい、といった。
人は、自分の愛するものを「美しい」と思うように出来ているのかもしれない。
そしてその対象について慎重に綴る文章も、また、美しい。
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